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Takashi Harada   -  Ondes Martenot

2013 
 Japan


原田 節 

オンド・マルトノ

2013  | 日本

収録協力 MUSICANOVA

黒田珠世 ハラダ チエ

オリビエ・メシアンの作品で使用されていることが有名なオンド・マルトノは新しい楽器ではあるが音響的にも機構的にも「ひとつの旋律を歌う楽器」としての徹底した方向性を持つ。原田は世界的ソリストでありメシアン夫妻、レディオヘッドとの交流も深い。象徴的なシーンを作り出す編曲は楽器を知り尽くしているヴィルトゥオーソならでは。

 

| Artist Message

 レコードでしか聴くことのかなわなかったカザルスの演奏を動画で見ることが出来たのは、高校生の時。 倫理社会の先生が、国際連合本部でのコンサートを当時非常に貴重で珍しかったオープンリールヴィデオ録画をしてくださって、授業時間中に、どんな教科書よりも意義があるから、と見せてくださったのです。 衝撃でした。 音楽の持つ力、訴えかけてくる何かはかり知れなく深遠な世界、音楽への道を舵取った出会いでした。 今でも音楽が音楽であるだけではなく、その先にある人間にとっての一番大切な何かを一瞬にしてもたらしてくれる音楽の持つエネルギーに思いを馳せています。

 鳥たちは自由に歌っているのでしょうか。 一体それは私たちに聞こえてくる「歌」だけではなく、その隙間のサイレンスでコミュニケートしている可能性もあるのでしょうか。 我々愚鈍な人間には感知できない、なんだかの波動を呼び起こしているのでしょうか。 あるいは生きることや食べ物探し、自分より大きく強いものから逃げ惑うことに必死でありつつも、パートナー探しに明け暮れているのでしょうか。 それとも自分の美声に酔いしれているのでしょうか。

    今回の演奏では、カザルスの編曲を土台にして、僭越ながら、様々な地域の多種多様な鳥たちの歌声がそれぞれ自由に現れては去っていくイメージで考えました。 鳥たちは何かの軸にぴったりと全員が合わすことはなく、それこそそれぞれの自由を楽しんでいます。 そしてジャック・ブレルの「愛しかない時」の歌詞ですが、<兵隊の太鼓に打ち勝つことが出来るのは、ただひとつのシャンソンのみ>という信念を思い出していました。 はかない人間の愚かさ、弱さは一瞬聞こえてくるハミングで象徴されます。

 ここで聴くことができる演奏は、コンサート本番のものですが、リハーサル時に同じくコンサートにご出演だった、ナターシャ・グジーさんの天から聞こえてくるような歌声に触れて、やはり音楽は天上の響きになるよう意識した演奏になったと思います。 お客様ひとりひとりの集中力が畏敬を感じるほどに強く、“演奏させられている”実感でした。


 一区切りとは、新しい旅立ちに他ならないと思います。実際このプロジェクトに参加させていただけることになった時、ジャンルを問わない多くの音楽家の方たちから、ご自分も参加したい旨連絡をもらい、また音楽家でなくとも、何か協力したいという熱い叫びをいくつも伺いました。 あらためて、この「鳥の歌」に対するそれぞれの思いが、人々の中でいかに大きな存在なのかを実感しております。映像や音響の素晴らしい皆様方との共同作業は,どの音楽家にとっても刺激的で新しい挑戦につながることでしょう。 そして歌い継いでいく大切さをもっともっと多くの方々と分かち合えればと望んでおります。

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